■恋人の証明(9)■
 
 
 
フロドはふわふわと何かに運ばれていた。
自らを優しく柔らかく包み込む温かいなにか。
懐かしく心を落ち着かせる新緑の匂い。
なぜだか五感で感じる全てがレゴラスを思い起こさせる。


彼と離れてどれだけの時間が過ぎたのだろう。
強く優しく綺麗な自分の恋人。
彼を想うと心と躯が嵐に巻き込まれたような感覚を覚える。


躯のある部分にあの時の刺激が蘇ってくる。
ミナス・ティリス最後の夜。
誰にも触れさせたことのない自分ですらほとんど触れたことのない、恥かしいあの場所に彼は戸惑いもなく愛撫を与えてきた。
窄まったその場所を優しく愛し湿らせたあと、ゆっくりと忍び込んできた指。
体内に受け入れたそれは細くても圧迫感と苦しみをフロドに与えた。
しかし、焦ることなく浅い所を掻き回され続けているうちにそういった感触は薄れ、もどかしいような感覚が生まれる。
レゴラスが欲しいと、躯が彼を求めた。
彼を取り込んでひとつに溶けてしまいたいと望んだ。


夢現の中でフロドは意識を拡散させる。
躯が溶けて思考もはっきりせず、ただレゴラスの気配に囲まれて幸せに満たされていた。


蕾に与えられる刺激。
あのただ一度の行為はフロドの躯に深く刻み込まれていたのか、リアルに蘇ってくる。


優しい指が双丘の間にすべりこみ、その間の窄んだ小さい口をゆっくりと撫でる。
少し押しては引く、焦らすような愛撫に無意識に腰が揺れる。
ヌルリと濡れたような滑るような感触。
蕾に何かが塗り込められている。
乾いた状態での愛撫と大きく異なる、その刺激。
下肢に痺れるような快感が広がっていく。
性器を扱かれているわけでなく、性器ですらないその場所を嬲られているだけで快楽を感じる躯が恥かしい。

つぷっと小さい音が聞こえたような気がした。
耳でなく躯で感じた音だったかもしれない。
その音と共に体内に忍び込んでくるもの。
レゴラスの長くて綺麗なあの指だ。
ゆっくりとゆっくりと体内を掻き回してくる。
ヌチャヌチャと何か淫らで厭らしい水音が蕾から洩れてくる。
恥かしくって仕方がないが、ずっと求めていたもののような気がする。
小さな痛みと圧迫感が薄れてきたころに指が増える。
蕾は乾くことなく濡れ続け、激しくなっていく愛撫にも、増えていく指の数にも、苦痛を感じることなく受け入れ続けた。

なんて淫らな夢をみるんだ、とフロドは恥かしく思う。
だけど躯は正直でビクビクと震え、夢の中のレゴラスの愛撫に悦んで応えるのだ。
性器への刺激はいっさいない。
蕾への刺激だけでフロドは何度も吐精をした。


こんなにも求めてしまう彼。
レゴラスは今どうしているのだろう。
ミナス・ティリスで元気にしているのだろうか。
再会の約束はしたが、それが果たされるのがいつになるのかわからないのが切ない。
彼の笑顔、優しい瞳。
会いたくて会いたくてしかたがないのに、未だに再会は叶わない。

・・・・・・未だ、叶わない?

いいや、違う。
彼は訪ねて来たではないか。
旅の記憶を綴っていた深夜に。
暗い闇を背負って扉を叩き、フロドの名前を呼んだ。

そうだ、彼は訪ねて来てくれた。
また、彼の笑顔と優しい瞳をみることが出来・・・・
てない?

彼は笑っていなかった。
表情は真剣で瞳には縋るようなせっぱつまった色を乗せていた。
なぜあのとき気がつかなかったのだろう。
驚いて、浮かれて、自分の感情で精一杯だった。



なぜ。
彼はあんなに哀しそうだったのだろう?

 
 
 
 
 

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 ■なかがき■
ようやく書きたかった本編に入りました。
といっても、前回までのプロローグよりも短いかも?(笑)
   
   

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