■よいびと(前編)■



ゴンドールの都、ミナス・ティリス。
頂上に近いとある館に旅の仲間達は集っていた。

指輪を葬り去ったフロドが、旅の疲れと指輪の呪いからようやく心も体も開放された頃。
その館の一角では宴会がもようされた。
旅の仲間たち、そしてフロドをよく知るファラミアなど内輪だけの宴会であったが。

「ほら、フロド。飲んで、飲んで!」
メーリーとピピンが陽気にはしゃぎながらフロドにジョッキを押し付ける。
「サムとの旅の間中、ロクなものを喰っても飲んでもなかったんでしょ?どんどん飲んで!」
手の中に押し込まれたジョッキ。
それと仲間を交互に見つめて、フロドは嬉しそうに微笑んだ。
久々の楽しいく明るい雰囲気、それに心の通じ合った仲間達の笑顔。
それらを受けて従来の笑顔がフロドに戻って来た。
「そうそう、フロドは笑った方が可愛いんだから。眉間に皺寄せる癖をさっさと治さなきゃね!」
「か、可愛っ・・・」
自分より年下の従兄弟に可愛いなんて言われても嬉しくもなんともない。
大体男に対して可愛いもなにもないだろう。
と、言葉を詰まらせ不満げな表情を作ったフロドの眉間をメリーが指で突っついた。
「これ、これ!この皺だよ。このままだとガンダルフより皺が深くなるよ、フロド」
どっ、と笑いが起こる。
やはり不満げな表情でフロドは周りを見渡す。

アラゴルンもレゴラスも。ギムリもサムもファラミアも楽しそうに笑っている。
なんだか憮然とするものもあるが、みんなの笑顔がすべての解放と喜びを満ち溢れさせていて
フロドはなんだか怒っているのが馬鹿馬鹿しくなった。
ま、いいか。
そんな諦め半分な気持ちでフロドは苦笑した。

その表情がまた可愛い。
と、誰も声にこそ出さなかったが思いは一緒らしい。
成人しているとはいえホビットは小さく、陽気でむじゃきな様子は愛らしくみえるのだ。
そのうえフロドは特に整った顔をしている。
みとれるな、可愛いというな、という方が無理なような気がするのだ。

「まあ、いいじゃないか。皆でまた出会えたことを祝して。」
アラゴルンがジョッキを大きく掲げると、皆が同じように唱和して。
宴会は賑やかに始まったのだった。


「おくれてすまぬ。」
ガンダルフが謝りながら扉をあけると、室内は賑やかに盛り上がっていた。
メリーやサムがおおらかに歌いながら卓のうえで踊っている。
その周りに集った者達は囃子ながらジョッキを空けていた。
「盛り上がってるようだな。」
「あっ、ガンダルフ!遅いよーー。」
メリーが卓のうえからカンダルフに向けて飛びついてきた。
「おおっ・・・と。」
ホビットが軽いとはいえ、飛びついてこられたらそれなりのものだ。
ガンダルフは少しよろけながらもメリーを受け止める。

楽しそうな雰囲気にガンダルフの表情にも自然に笑みが浮かぶ。
室内をぐるりと見渡して仲間達の様子を見たガンダルフは、次の瞬間にピタリと固まった。
笑顔は張り付いたまま、目を丸くしてある一点を凝視している。
だが、次の瞬間にはしがみついたメリーをそのままにカツカツとその場所に歩みよった。
「ピピン!フロドにどれだけ飲ませたんじゃ!」
大声で怒鳴りながらピピンとフロドからジョッキを取り上げる。
「それにメリー!どうなるかわかってるのにお前はフロドにこんなに飲ませたのかっ」
雷が落ちる瞬間にメリーはとっととガンダルフから飛び降りて、フロドの後ろに回っていた。
「いいじゃん、久しぶりだし。」
「よいわけがないだろう、お前たちわかってて飲ませたなっ。」
ガンダルフの剣幕に他の仲間たちが目を白黒させた。

確かにフロドは酔っていた。
メリーやビビンに進められるままに飲み続けていたのだ。
なぜか最初のうちはサムが止めに入っていたのだが、そのうち彼も酔いが回ってきたようで
陽気にはしゃぎだし、メリー達がフロドに飲ませることに関して何も言わなくなった。
だが、そんなに怒ることではないのではないか、と皆は思った。
それどころが彼らは酔ったフロドの様子を愉しんでいたのだ。

酔ったフロドはなんともいえず色っぽかった。
肌も頬もほんのりと桃色に上気して、トロンとした瞳も潤んでいる。
はんなりと笑う姿も愛らしく好ましい。

「ガンダルフ。そんなに怒らなくていいじゃないか。フロドも子供じゃないのだし。」
アラゴルンがとりなすが、ガンダルフの怒りの視線に固まってしまう。
「そうですよ。フロドだって楽しく飲んでいるんだし。ね?」
近くにいたレゴラスがにっこりと笑ってフロドの顔を覗き込んだ。
それに応えるようにニコッと笑ったフロドをみて。
「いかんっ!」
ガンダルフが叫んだときには既に遅かった。

フロドの両手がゆっくりとレゴラスに差し伸べられる。
ホビット特有の抱き癖なのだろう、とレゴラスは気にすることなくフロドを抱きかかえた瞬間。

「んっ?!ッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」

レゴラスは驚きに目を見開いたまま、フロドによって後ろへ押し倒された。
そう。唇を、奪われたまま。
レゴラスの首に腕を巻きつかせフロドがその唇に吸い付いたのだ。
そして、なんと舌まで差し込まれている。

「だから、いわんことじゃないっ」

フロドの首根っこを捕まえてレゴラスから剥ぎ取ろうとするが、しっかりと張り付いていてなかなか離れない。
その間にも、ぴちゃりぴちゃりと舌の絡み合う音が響き渡る。

「フロド、よさんかっ。」

ようやく引き剥がすと、レゴラスは至福の表情を浮かべてうっとりとしていた。
  
 
 
 
 
 

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 ■なかがき■
いやぁ、酔うと『キス魔』になるフロドも良いのではないか
と思ったのですが、如何なものでしょうか?(笑)
そのうえ、意外とテクニシャンなんですよ!テクニシャン!!
王子がうっとりとしてしまうほどには(爆笑)
 
   

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