■よいびと(後編)■



「次は僕、フロドッ」
「駄目だよ、フロド、こっち!」
「いいかげんにせんか!お前達!」

はしゃいで近づくメーリーとピピンの頭をガチリと掴む。
一連の行為を見ていた他の者達は目を丸くして固まっていた。
ふたりのホビットに怒鳴りつけるガンダルフに、アラゴルンの声が届く。

「い、今のは・・・いったい・・・」

唖然とする沢山の顔をみてガンダルフは大きく溜息を吐いた。

「くせじゃよ、フロドの癖じゃ。」
「癖?」
「フロドはある一定量を過ぎるとこの通り・・・」
「その・・・キス魔になると?」

ペタンと床に座り込んで皆を見上げる様子はなんとも可愛らしい。
こんな抱き殺したいほど愛らしいフロドとキスが出来るのは役得以外何者でもないだろう。
それも酔ったうえでのこと。
不可抗力、というより絶好のチャンスというものだ。
誰のものかわからないゴクリと喉を鳴らす音がした。

「でも駄目だよっ」

フロドの前にメリーとピピンが飛び出した。
両手を広げてフロドを守るように立ちふさがる。

「フロドは髭面は嫌いだもん。」
「そうそう、痛いって嫌がって髭面は対象外なんだ。」

ニヤリと笑って周りを見渡し勝ち誇る。
だってみんな、当たり前のように髭を生やしているのだ。
無念そうに自分の髭を触った者が何人いたかはここでは言うまい。

「なんだ、では相手は私しかいないということだね。」

いつの間にか復活したのか、ホビット達の後ろにレゴラスが立っていた。
その声に皆の視線がレゴラスに集まったときには、既に。
レゴラスはフロドを抱き上げていた。

「あ、レゴラス!」

振り返ったホビット達がフロドを取り戻そうと手を伸ばしても
残念ながら身長に差があり過ぎる。
ヒョイ、と軽いフロドの体を持ち上げて小さい複数の手を避けた。
高い高いをするように自分より高い位置に持ち上げたフロドに向かって
レゴラスが微笑みかける。

「フロド」

ちょっと首を伸ばし唇を差し出すとフロドは嬉しそうに唇を合わせた。
今度ははじめから薄っすらと唇を開いてフロドの舌を誘う。
ぬるりと忍び込んだ小さい舌にレゴラスは遠慮なく自分の舌を絡めた。
くちゅくちゅと再び淫らな水音が響く。
さっきは不意打ちで主導権をとられてしまったが今度は違う。
レゴラスは積極的にフロドの唇と舌を吸った。

「ん・・・ぁ」

甘く漏れたフロドの声に、目の前の行為に再び声なく固まっていた者達を正気に戻した。

「レゴラス!!」
「やめろ、レゴラスッ」
「ずるいよ!」

怒声に混じり、カチャという剣に手をかける音すら聞こえる。
フロドを取り戻そうとする、大きな手や小さな手とヒラリと軽く振り切って
レゴラスは弛緩したフロドを抱いたまま窓辺へ走った。
窓を大きく開けると、窓辺に足をかけくるりと振る向いた。

「では、私たちはそろそろお暇するとしよう。君たちはまだ宴会を楽しんでくれ。」

楽しげに笑いながらレゴラスは片手でフロドを抱いて、窓辺から飛び降りた。

「レゴラス!!」
「フロドーーーー!!」
「危ない!!」

それそれが各々の言葉を発しながら窓辺に辿りついたときは。
葉がザッザッと触れ合う音とレゴラスの高らかに笑う声だけが夜空に響き渡っていて。
あっという間にそれらの音も消えていった。

フロドーーーと叫びながらヨヨヨと泣き崩れるホビット達と窓辺から諦め顔で外を伺う者達に
アラゴルンからの叱責が飛ぶ。

「探すぞ!レゴラスからフロドを取り戻さねば!」

さすが王家の血筋というところなのだろうか。
威厳を持って指示する姿はなんとも頼もしい。
まあ、こういった場面で発揮されるのはいささか問題ではあるような気がするが。
ハッ、と我に返りもっともだと皆頷く。
アルゴルンを先頭に皆駆け出して、あっという間に宴会場はからっぽとなった。

「あんたは行かないのか、カンダルフ。」

パイプを取り出し呆れ顔で煙草を吸い出したガンダルフの横にギムリが酒を持ってドカリと座り込んだ。
もうこの場所にはガンダルフとギムリしか残っていない。
開けはなれた窓と扉がキイキイと音を立てているだけだ。

「お前さんこそ、いかんのか。」
「・・・・・・行っても無駄だろうよ。相手はあのレゴラスだ。」

長年に及ぶエルフ族とドワーフ族の不仲。
という状況でレゴラスの親友の座を得た男の言う言葉は重くすべてを表していた。
ガンダルフはふうっと肺の底から煙を吐き出して、ギムリをちらり見ながら顔を歪めた。
苦笑しようとして失敗した、という表情だった。

「その通りだ。」

はぁぁ、とふたり大きく溜息を吐く。
ギムリは自分の杯に酒を汲み、持っていたもうひとつの杯をガンダルフに差し出した。

「酒はどうだ?ガンダルフ。」
「いただこう。」

そして。
屋外からの、フロドを探す声とレゴラスを呼ぶ怒声を聞きながら。
ひっそりとふたりだけの宴会がはじまったのだった。
   
 
 
 
 

 

   
  
 ■あとがき■
レゴラス美味しいとこどりで暴走してますね。
というか、やっとレゴロフ奨励サイトらしき小説がUPできたような。(笑)
現在の当サイトの方向性としてはこんな感じの
「フロドスキーの仲間に囲まれてる(総受けっていうのか?)けどレゴフロ」
となっております♪
  
   

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