すってんぽろり

ズベッという豪快な音に五右エ門は振り返り、そして呆れた。
泥棒をしていて銃の腕は抜群の身のこなしも普通以上であるはずの男が、みっともなくすっころんでいたからだ。
確かにここは河原で足場も悪く、泥と水で濡れた岩場は滑りやすくはあった。
だがまさか、次元大介ともあろうものがこうも無様に転がるとは。
尻餅をつき、そのまま腰、背中と滑り後頭部をガツンと岩にぶつけて次元はとまった。
なだらかな岩肌で角がないのが幸いして傷ひとつなく、すぐに立ち上がったのだが既に遅し。
ズボンもスーツも背後一面、泥水でドロドロだ。
「うへぇ」
情けない呻きをあげながら、真っ黒になった両手をブラブラと振る。
「なにをしているのだ、情けない」
溜息をつきつつ近づくと、恨めしげな目でみつめ反してくる。
「汚れた手は川で洗え」
すぐそこはいい感じに足場となる岩があり、清流に簡単に手が届く。
次元は五右エ門の横をすり抜けてしゃがみこむと、ジャバジャバと手とはいわず、袖口まで水で洗いだした。
その背中にはたっぷりと泥がついている。
五右エ門は懐から手拭いを取り出して、それをゴシゴシと拭いてやったが1回くらいで落ちる量ではなかった。
手を洗い終わった次元を立たせ、汚れた手拭いを川で洗ってはまた拭く、ということを数回繰返した。
「もうこれ以上は落ちん。アジトに戻ってからちゃんと洗うんだな」
「くっそー、クリーニングに出したばっかだったのによ」
次元はぶつぶつ言いながら上着を脱ぎ、乾いた大きな岩の天辺に広げた。
今日は秋晴れでかなり気温も高い。ぐっしょりと濡れたわけではなく、湿っている程度だから1時間もあれば乾きそうだ。
「それよりも問題はケツだぜ」
尻を叩きながら次元は眉間に皺を寄せた。
尻餅をつきそのまま岩場を滑ったのだ。他のどこよりも汚れて、そして濡れてしまっていた。
「パンツまで湿ってやがる」
夏ならば脱いで洗って乾くまで裸でいても平気だろうが、いくら天気がいいとはいえ今は秋。外で裸になるには少し寒すぎた。
「我慢しろ。無様にすっころんだのはおぬしだ」
フンと答える五右エ門の言い草に次元はカチンとくる。
たしかにその通りだ。誰のせいでもない。
だが無様にすっころんだことへの気恥ずかしさと中途半端に濡れた気持ち悪さが次元を不機嫌にし、どうにかして五右エ門をギャフンと言わせたい気分にさせた。
なんだかんだ言って面倒をみて貰ったくせに、まあ逆ギレみたいなものである。
だが、ふいにあることを思いついた次元は一気に不機嫌オーラを吹き飛ばした。
そんな次元の変化をみてとった五右エ門は嫌な予感に襲われる。
「なぁ、ここは穴場で滅多に人が来ないっていってたよな」
「ああ」
滝つぼの真下のこの河原はちょっと奥まったところにあるせいか人は来ない。
だからこそ五右エ門はここを修行の場としているのだ。
「じゃ、ズボンとパンツを脱いで乾かしても問題ないよな」
「問題ないが・・・おぬし、寒くないのか?」
誰も来ないとはいえ、こんな場所で下半身素っ裸では寒かろう、なんと言ってもみっともなくないか。
五右エ門がそう言うと次元はニヤッと笑い、さっそくベルトのバックルとはずしはじめた。
「乾くまでせいぜい1時間ってとこだろ?ちょうどいい」
「ちょうどいい?」
問いに答えずズボンとパンツを脱ぎ上着をかけてある岩の上に広げると、ワイシャツ1枚になった次元は五右エ門ににじり寄ってきた。
「な、なんだ」
嫌な予感にジリッとあとずさる五右エ門に次元はニカリと笑いかけた。
「こんな場所でも、下半身裸でも、全然おかしくないことをしようぜ」
いくら五右エ門でも次元の言っている意味はすぐに理解できた。
いや理解したくなくとも、ワイシャツの裾からチラチラとみえるモノが少しずつ臨戦態勢へ変わりつつあるのが、嫌でも目に入るのだ。
「おぬし、まさかこんなところで」
「たまにはアオカンってのもいいよな?」
次元は満面の笑みを浮かべているが、それがかえって怖ろしい。
チャキッとつい斬鉄剣に手をやった五右エ門だったが、スカッと空をきってようやく持っていないことに気がついた。
そういえばさっき次元の面倒をみてやったとき地面に置いたままだったのだ。
そして、その斬鉄剣は今は次元の足元にある。
「ま、1時間くらいだ。ちょっと付き合ってくれよ」
こめかみに汗を垂らしハハハと小さく五右エ門は笑ったが、別におかしいわけではない。
この馬鹿馬鹿しい状況に乾いた笑いをあげるしかなかったのだ。
「剣がないとはいえ、拙者がそう簡単にやられると思っておるのか?」
「どうかな?滅多にないシチュエーションだ。おまえさんも充分楽しめると思うぜ?」
一発触発の気の中、五右エ門は斬鉄剣を手にすることもできず、ジリジリとあとずさる。
ガサリ。
いつの間にか岩場を横切り草場に追い詰められていたことに五右エ門が気づいたのと、ニヤーリと次元が笑ったのは同時だった。



そのあとどうなったのか。
それは言うに及ばず、ただ貴女の妄想のままに。



 
■コメント

自分が河原ですっころんだ経験を元に書いたのですが・・・
次元が変態ちっくですみません(笑)
『漢』な五右エ門がこのままヤられちゃうかどうかわかりませんが、『漢』だからこそ開き直ってアオカンを楽しむってのもアリかと♪
ま、それはこれを読んでくださった方の妄想のままにv
 

 
 
 

 

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