次元はこの瞬間が一番好きだ。
キスを交わしたり、甘さを含んだ喘ぎ声を聞いたり、熱い体内で弾けることも勿論好きだが、今このときのこの瞬間が何事も敵わない、最高の刻だと思っている。
普段はあまり感情を表さず修行にばかり明け暮れている姿をみていると、この男には欲望だの情欲だのというものはないのではないかと感じることもある。
だが、一度抱き合えば、それは違うのだということがわかる。
冷たそうにみえる肌は意外と熱く、だんだん行為に没頭し夢中になっていく姿は自分と同じ生身の男。
どちらから手を伸ばしたのかは覚えていない。
同性だというのにこういう関係になってしまった切欠は、忘れてしまえるくらい些細なことだった。
だが、次元が抱く側にいるということは、強く求めたのは次元の方だったのかもしれない。
女を抱くような面倒なプロセスはない。
欲しいときに手を伸ばし、お互いを喰らい尽くすように貪り、交わる。
だが、さすがに性器ではない場所を使うのだから、挿入に至るまでは女に対する以上にしつこく丁寧に解していく。
堪らなくなった五右エ門が自ら腰を揺らしてねだってくるまで愛撫を施す。
そして一度緩み解れた器官は、完全に男を迎える性器と化して、次元を奥深くまで呑み込み絞り尽くす。
ゆっくりと腰を進ませると白い頤が仰け反った。
複数の指の慣らしだけでは足りなくって、もっと太く硬い塊の侵入を望んだのは五右エ門自身だが、この最初の挿入の瞬間だけは何度交わっても圧迫と痛みを感じるらしい。苦痛の表情を浮かべている。
押し戻すような動きをする器官を次元は遠慮なく分け入っていく。
太い先端を呑み込んだときが一番辛いらしく五右エ門は小さく呻いた。
しかし一度受け入れてしまえば、それらの苦しさは別の感覚にすりかわっていく。
狭い窄みがじわじわと広がり根元まで次元の性器を呑み込んだ頃には、五右エ門の表情に浮かぶのは苦痛ではなく快楽。
気持ちよさそうな表情を確認して、次元は抽送をはじめる。
引き抜いては押し込み、押し込んでは引き抜く。
船を漕ぐように大きく動いては、機関銃のように小刻みに突き捲くり、円を描くようにぐちゃぐちゃと掻き回すと、五右エ門が快楽の声をあげた。
女の高い声とは違う低い男の喘ぎ声だが、次元の欲情を増幅させるのには十分だ。
腰を振って何度も激しく突き上げると、五右エ門は仰け反りながらも次元の動きに合わせて自らも腰を振り出す。
その瞬間の表情が。
欲情に塗れ、獣のように発情し、快楽だけを追いだす、その瞬間。
五右エ門はこれ以上ないというほどの恍惚とした表情を浮かべる。
時には大きく両足を広げながら、時には獣のように腰を突き出し、時には次元の上で自ら上下に動きながら、五右エ門はその表情を浮かべる。
その顔をみることが出来る、この瞬間が一番次元は好きなのだ。
なにもかもをかなぐりすて、きっと業も修行も石川五右エ門という名すら捨て去り、ただひたすら次元との交わりに没頭する、その淫らさ。
求めて、求められて、最高の快楽を共にして、高みを目指して貪り合うように交わる。
そのはじまりともいえる、恍惚とした表情は次元をたまらなく発情させる。
そして。
なぜ手を伸ばしたのか。
同性だというのにこういう関係になった理由はなんなのか。
この瞬間に、次元はそれを強く自覚する。
自分はこの侍に、心底惚れているのだと。
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