ドンッと勢いよく壁に押し付けられた。
身長差のせいで見上げてくる瞳が、ギラギラと紅く光っている。
視線を絡ませたまま、唇が合わさり一切の躊躇なく舌が口内に差し込まれた。
くちゅくちゅと唾液が絡まる音がゴミゴミした裏路地に響き渡る。
こんな真夜中に袋小路のこんな路地に人が来るとは思えないが、月は明るく辺りを照らしているから、もし人が来れば俺達が何をしているか一目でわかるだろう。
それなのに、この男は気にする様子もなく、舌を絡ませながら俺の服の中に手を差し入れてきた。
遠慮なく動き回る舌と手。
こいつが何を求めているのか、一目瞭然だ。
俺が反応しないことに苛立ったのか、唇を離し睨みつけてきた。その瞳はすっかりと欲情の色に染まっている。
「今日は随分積極的だな」
BJから誘ってくることはあまりない。
それも会った途端に会話もなく路地に引き込まれ、こんな場所で仕掛けてくるなんて性格的にあり得ない。
BJは俺の反応のなさが戸惑いから来ていることに気がついたのだろう、目を細め微笑を浮かべた。
「春だからな」
そう囁きながら顔が近づき耳朶が舐められた。
肌を弄っていた手が滑りおりスラックスの中に忍び込んでくる。
器用な指先が鍵盤を叩くように俺の感じる場所に正確に触れる。
「まるで獣だな」
舌がぬるりと唾液を擦りつけながら喉元に辿りつき、強く吸い付いてくる。
ゾクゾクとした快感と興奮が背筋をかけあがる。
「だが雄のくせに抱かれたいんだろう?自然の摂理に反してないか?」
ニヤリと笑って憎まれ口をきいてやると、喉仏に軽く噛み付かれた。
「お望みなら俺が突っ込んでやってもいいぞ、キリコ」
見上げてくる瞳は発情した雄のもので、強い力を放っている。
冗談ではなくこいつは本気で言っている。気を抜くと喉笛を食い千切られそうだ。
こんな場所で、こんなに発情した強い雄を抱くことに、俺の脳はすっかり興奮した。
「お断りだな。だが存分に犯してやるよ。獣らしくたっぷりとな」
BJは挑戦的にニヤリと笑い、ふたたび俺の唇に喰らいついてきた。
今度は俺も遠慮はしない。
舌を絡ませ吸い上げながら、BJの服を乱暴に剥ぎ取っていく。
遠くから、赤ん坊の泣き声のような猫どもの盛り声が絶え間なく聞こえていた。
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