「パンツを履きなさい」
アジトに帰って来た次元を迎えたのは、そんなルパンの声だった。
廊下の奥、少し開いた扉の向こうから聞こえたそれは、勿論次元に向かって言われたものではない。
ファミリードラマでなら稀ではあるが裸族になった小さい子供に母親が投げかける言葉だったりするが、
ここは泥棒、ルパンファミリーのアジトである。小さい子供などいるはずはなく。
「いいからパンツを履けって!」
声の主がルパンだということは、相手は五右エ門しか在りえない。
現在このアジトに潜伏しているのは次元を含め三人だけなのだから。
「お前のスタイルに合わせたフィットするタイプの服なんだって!褌だとモコモコしてみっとねぇだろうが!」
そっとドアの隙間から部屋の中を覗き込む。
正面には腕を組み顔をそむけ拒絶の意を示す五右エ門。
その手前には、キーキー喚きながらピラピラしたものを突き付けているルパンの後姿。
成程。
様子を伺ってようやく次元は納得する。
和装一辺倒だった五右エ門は馴れぬ洋装にてんやわんやしていたが、最近は仕事と割り切って変装だと言えば文句なく洋服を着るようになった。
それでも体を締め付けると苦手な様子を残しているというのに、最後の砦である褌までも替えさせる必要があるらしい。
「パンツを履きなさい!!」
何ともいえないルパンの言葉を聞きながら、
トランクスやブリーフをすっとばし、いきなりTバックとは侍にはハードルが高すぎるだろうなぁ、と次元は肩を竦めた。
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