「ちょっと遠出しねぇか」
キーを指先でくるりと回して次元が言った。
ゴロゴロしていることに珍しく飽きたのか、伸び上がりながら「暇だ」と発言した直後だったので、五右エ門は一瞬反論しようとしたが、すぐに口を噤んだ。
待機という名の半拘束状態でも修行は可能だ。
狭い庭で素振りをしても良いし、アジト内に篭れと言われたとしても部屋の片隅で瞑想すれば良いことだ。
探そうと思えば、修行になり得ることは沢山ある。
つまり五右エ門は暇ではない。
だが次元とふたりで外出するという提案は悪くはない。
暇じゃないと言ってしまえば、外出することに同意するのはおかしい気がして、反論の言葉が出る前に口を閉じたのだが。
「嫌か?」
返事がないことを拒絶と受け取ったのか、次元は五右エ門に体ごと顔を向けた。
嫌なはずはない。
仕事中の接触を禁じたのは五右エ門だったが、中途半端な状況がいつまで続くかわからない今、少しくらい羽目を外してもいいのではないかと思う。
「じゃ、行こうぜ」
五右エ門が何かを発する前に、次元は目元を緩めながらニヤリと笑って言った。
こんなところは以心伝心。
目は口ほどにものを云う、顔を見ればお互いの心境は手に取るようにわかる。
きっと今日中には帰れないだろうなと思いながら、ドアに向かう次元の後に続く。
久々の逢瀬は望むところ。
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