■恋人の日■
 
 

「ちょっと遠出しねぇか」
キーを指先でくるりと回して次元が言った。
ゴロゴロしていることに珍しく飽きたのか、伸び上がりながら「暇だ」と発言した直後だったので、五右エ門は一瞬反論しようとしたが、すぐに口を噤んだ。
待機という名の半拘束状態でも修行は可能だ。
狭い庭で素振りをしても良いし、アジト内に篭れと言われたとしても部屋の片隅で瞑想すれば良いことだ。
探そうと思えば、修行になり得ることは沢山ある。
つまり五右エ門は暇ではない。
だが次元とふたりで外出するという提案は悪くはない。
暇じゃないと言ってしまえば、外出することに同意するのはおかしい気がして、反論の言葉が出る前に口を閉じたのだが。
「嫌か?」
返事がないことを拒絶と受け取ったのか、次元は五右エ門に体ごと顔を向けた。
嫌なはずはない。
仕事中の接触を禁じたのは五右エ門だったが、中途半端な状況がいつまで続くかわからない今、少しくらい羽目を外してもいいのではないかと思う。
「じゃ、行こうぜ」
五右エ門が何かを発する前に、次元は目元を緩めながらニヤリと笑って言った。
こんなところは以心伝心。
目は口ほどにものを云う、顔を見ればお互いの心境は手に取るようにわかる。
きっと今日中には帰れないだろうなと思いながら、ドアに向かう次元の後に続く。

久々の逢瀬は望むところ。

 
 
■6月12日■
  

 
 
 

   
■小さな親切の日■
 
 

次元は朝からソワソワしていた。
なぜならば今日はルパンが出かけるからだ。次の仕事の下準備をしてくるらしい。
次元は朝からわくわくしていた。
なぜならば今夜は五右エ門とふたりきりだからだ。久しぶりのことである。
次元が五右エ門と一線を越えて随分経つ。
仲間でありながらも、ふたりきりのときには恋人という関係がプラスされる。
公私混同はしない。
体面上はそう言っているが、ただ単に五右エ門が恥ずかしがっているだけである。
照れたり慌てたりと恋愛に初心な様子の五右エ門は可愛いが、ある意味つらい。
ルパンが一つ屋根の下にいる限り、仲間としての範疇を超えてくれないのだ。
キスをかすめとるくらいがせいぜいで、セックスなんて夢のまた夢である。
だからルパンの外出は次元にとって喜ばしい出来事でしかない。
五右エ門だってルパンの目を気にしているだけで、次元を好いていることに変りはない。
触れ合いたい、抱き合いたいと思っているのはお互い様なのだ。
だから今夜は熱くキメるぜ、朝まで寝かせねぇ!
なんて密かにウキウキワクワクソワソワしているのだが、ルパンはすべてお見通しだったのだろう。
「次元」
ドアから出て行こうとしていたルパンが振り返った。
「・・・なんだ?」
煙草を燻らせながら何気なく応えるが、心の中では早く出かけろと発破をかけている。
「どうせ準備なんかしてないんだろ?」
ニヤリと笑ってルパンは懐から取り出したモノを次元に向かってピーンと指で弾いた。
「ほら五右エ門も。ちゃんと使ってもらえよ」
同じ様に放たれた品を掌で受け止めた五右エ門は、訝しげな表情を浮かべながらそれを見た。
そして数秒後、ぼんと茹蛸のように真っ赤になって勢いよく立ち上がる。
「拙者も出かけてくる!」
早足で、ルパンとドアの間を潜り抜けてあっという間に姿を消した。
「おい、ちょっと待てよ!」
せっかくふたりきりになれるのに、なんでだ!
慌てて立ち上がった次元の手の中でクシャリと何かが潰れた。
さっきルパンが放ったものだ。そして五右エ門が逃げ出した原因でもある。
手を開いてそれを確認した次元はウガッと唸ってルパンに怒鳴りつけた。
「なんてことしやがる!!」
「セーフティーセックスだぜ、小さな親切じゃねーの」
うけけという笑い声と共にドアの向こうに逃げたルパンに向かって次元はさらに叫んだ。
「大きなお世話だ!!」
コンドームを床に叩き付けながら、すべてを見透かされていることに羞恥した五右エ門が、ちゃんと戻って来てくれることを切に願うのだった。

 
 
■6月13日■
 

 
 
 

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