■拾得物の日■
 
 

外出したはずの次元が数分もしないうちに戻って来た。
いつも通りの軽装で出かけたはずが、今は大荷物を抱えている。
「ナニソレ」
「拾った」
よくそんな大きくて重そうなものを小脇に抱えられるな、とルパンはある意味感心する。
「どこで」
「玄関の手前5mくらいだな」
「で、オマエ、拾ってきちゃったの」
「仕方ねぇだろ」
「なんか臭くねぇ?」
「ボロ雑巾みたいなもんだからな」
「とりあえず風呂に放りこんで来い。臭くて汚ねぇモンにベッドは使わせられねぇ」
どこをどうしたらそんな状態になるのか一度しっかりじっくり問い詰めたい気もするが、きっと想像通りだろうから無駄なことはしない。
一応帰巣本能はついていたのだろう。帰って来ただけマシだと思わなければ。
「なぁ、ルパン」
「なんだよ」
「拾ったモンって何割俺のモンになるんだっけ?」
「・・・知らねぇよ。俺は交番になんか届けねぇからな」
「そうか。このまま着服すれば全部俺のモンか」
長く会っていなかったせいでまともな判断能力がなくなっていたのか、訳のわからないことを言い出した相棒の尻を蹴飛ばす。
「それは五右エ門と相談しろ!とにかく風呂に連れていけ!」
じろりと睨んでくるが、意識のない男を風呂に放り込んで好き放題できる誘惑には勝てないらしい。
「ピカピカにしてくるから、なんか軽いもの作っとけよ」
天下の大泥棒様にメシを作れと命令するとはどういうことだと、ちょっと思わないでもなかったが。
「俺も次元も甘いよなぁ」
あのスタボロ加減ならメシも食っていないだろう。
仕方ないとルパンは小さくため息をついた。

 
 
■4月25日■
 

 
 
 

   
■畳の日■
 
 

「匂いたつ香り、すべらかな手触り、きめ細かさ、そしてこの目の美しさ・・・」
うっとりとした表情で、五右エ門は手を滑らせる。
まるで愛おしい人を愛撫するかのように優しく撫で、嬉しそうに見つめている。
「気に入った?」
「うむ」
さっきまでの仏頂面はどこに行ったのやら。
ルパンの後ろからその様子を伺っていた次元は眉を寄せた。
普通ならご機嫌な五右エ門を見るのは嬉しいし、当分一緒にいられるのは喜ばしいことだ。
だがとにかく気に入らない。
「五右エ門のために空輸したのさ。最高級品だぜ」
「わかっておる。この弾力だとちゃんと藁床を使っておるし、なんといっても目が美しく、畳縁も素晴らしい。職人による最高の技が詰まっておる」
「おっ、わかってくれちゃう?贈りがいがあるってもんよ」
ルパンは満面の笑みを浮かべる。
下心があってのことだが、ちゃんと価値を理解してくれるというのは喜ばしいことだ。
「で、五右エ門ちゃん」
「あと1カ月で良いのだな」
「そうそう!次のヤマはそうとうデカぜ。お前の力がどうしても必要なんだ」
「手を貸そう」
日本を離れて随分経つ。
そろそろ故郷が恋しいのと修行に身を入れたいからと去ろうとする五右エ門の引き留め作戦は大成功だったようだ。
いつの間にか出来上がっていた和室モドキ。
新品の畳の香りをかぎながら次元はやっぱり不機嫌だった。
「畳にヤキモチ焼かねぇの」
部屋から出て行くルパンが擦れ違うざま、呆れたように言った。
「放っとけ」
五右エ門は未だ畳に夢中でふたりの会話も耳に入っていないようだ。
その様子をみて、今夜この畳のうえで好き放題してやると次元は決心した。

 
 
■4月29日■
 

 
 
 

戻る









 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル