あの瞬間まで俺はなんともなかった。なにも思ってなかったはずなんだ。
それなのに突然衝動がこみ上げてきたんだ。
まるで光に集まる羽虫みたいに。
まるで蜜に引き寄せられる蜂みたいに。
抗いようのない何かに惹き寄せられた。
抵抗なんて出来なかったんだ。
体が熱くなって頭がクラクラして息が苦しくなって眩暈までした。
無意識に手が伸びて気がついたら引き寄せてた。
俺の意思はあまり動いてなかった。
すべてが夢の中の出来事みたいで自分が自分じゃないみたいでさ。
そうだ、まるで催眠術にでもかかったみたいだったんだ。
どうしようもなかった。
俺の意思ではもうどうしようもなかったんだよ!
「それは溜まってただけの、ただの欲求不満だろ」
天の岩戸ごとく、完全に閉ざされた五右エ門の部屋の前。
燦燦と朝陽が差す廊下に全裸で追い出さた次元が延々と言い訳をするのを、ルパンは一言で斬って捨てた。
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