冬は日が暮れるのが早い。
2月になれば少しは日が長くなるが夕方6時を過ぎれば真っ暗になる。
挙句に寒い。
暖房器具をつけるか風呂に浸かるかしなければ寒さを凌ぐのは厳しい。
修行と質素を愛する五右エ門にとればとるに足らぬことだが、次元はそうはいかない。
仕事中ならまだしも日常生活を送るうえで無駄な寒さや暗さは御免こうむりたい。
それなのに。
早い夕食をとりさっさと風呂に入ったこの日の次元は文明の利器を自ら放棄した。
照明を落とした部屋は窓から差し込む外部の明かりを頼りにしなければならない程の薄暗さ。
暖房を切った部屋はじりじりと溜め込まれた暖かさを散らしはじめ徐々に温度は下がっていく。
宵っ張りで寒がりな次元の行動とは思えないと、ソファーで胡坐をかいていた五右エ門は驚きに瞠目した。
「どうした次元」
目の前に立った男を見あげ問うと、無言で手首を引かれた。
思わずソファーから立ち上がった五右エ門を次元はぐいぐいと引きずっていく。
冷え切った部屋に連れ込んで、冷えた寝具に五右エ門を押し倒し、ようやく次元は口を開いた。
「今日は省エネの日なんだと」
「省エネ?」
「そ。だから今夜は暗闇の中で自力で暖まるんだよ」
覆いかぶさった男の顔は陰になってよく見えないが、口元が笑いに歪んだのだけはわかった。
「そうか」
「そうだ」
五右エ門も同じく笑みを浮かべ、宵っ張りで寒がりな恋人の体を引き寄せた。
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