ぐらり、とベッドに倒れ込んだ次元を見て五右エ門はわたわたとする。
「じ、次元!?大丈夫か!?」
慌てて声をかけるが返事はない。
目を閉じて、くったりとしている。
既に眠りについたのか、なんの反応もない。
ふぅ、と五右エ門は溜息を吐き、次元の顔を覗き込んだ。
そして、額に張り付いた髪を整えてやろうと指を伸ばす。
触れた額は熱くて玉の汗がういている。
目尻にはうっすらと涙のあともある。
五右エ門を惹きつけてやまない男らしい顔には苦悶の表情が浮かび、その様子はなんとも痛々しい。
「こんなことなら、無理にせねばよかった」
ぽそり、と小さく呟き、赤く腫れた手首を撫でると掛布の中へそっと入れた。
しばらくじっと次元を見つめていた五右エ門であったが、背を向けると隣の部屋へ向かった。
そして数分後。
その扉の向こうから五右エ門の怒鳴り声が響いてきた。
電話を使用しているようで相手の声は聞こえないがたいそう御立腹のようである。
「全然良くならぬではないか!?」
「少しは熱が引いて意識は戻ったが、また寝込んでしまったぞ?」
「いきなり倒れて一週間も熱が引かぬうえ、拙者の煎じた薬草も効かぬから、ルパン、おぬしに相談したというのに!!」
「はぁ?ちゃんと使ったぞ?」
「意識が朦朧としながらも相当抵抗したが」
「おぬしが絶対に効くと言うから、押さえつけて無理矢理突っ込んだでござる!!」
「それなのに治らぬとはどういうことだ!?」
「わからん、じゃないだろうが!」
「使ったと、言っておろうが!!」
「おぬし特製の座薬をちゃんと使ったと言ってるだろう!!」
その声は、ショックで再発熱し意識を飛ばした次元の耳には届かなかった。
だがとりあえず、リバは免れたようである。
まあ、座薬挿入の勢いで指1本くらいは突っ込まれちゃったかもしれないが。
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