■日本流年末年始の過ごし方【12/31】■

 
 
 
 
 

まる二日かけて掃除しただけあって室内はピカピカ・・・まではいかないが、居心地の良い空間になっていた。
炬燵に入りつつヒーターの真ん前に陣取るという最高の場所で、次元は酒をチョビチョビと飲みながら寛いでいた。
台所からはまだ包丁や鍋を使う音が聞こえてくる。
朝から開始された御節制作の最終段階に入ったらしい。
「よくやるぜ、ホント」
この忙しさを身をもって体験した次元に言わせれば『正月休みたくばその分年末に働け』というのが日本の一般家庭の年末年始なのだ。
まさに『ただで休めると思うな』状態である。なかなか厳しい。
そして日本の年末年始を熟知した五右エ門は次元以上に働いた。掃除だけでなく御節造りまで余念がない。
すっかりと、良いお嫁さん状態である。
五右エ門の御節が出来れば、あとは次元が望んでいたゆっくりまったりふたりっきりな時間が始まる。
この数日、五右エ門とは一度も寝ていない。
移動中は当たり前のこと、到着した当日は疲れ果てて即寝。昨日に至っては餅つきが祟って腰を少々痛めてしまい、五右エ門相手に腰振ることを断念せざる得なかった。
最初は面倒だと思っていたが、始めるとなかなか杵を使うのは面白かった。
日頃仕事でツルハシを振るうこともあるから同じようなものだろうと甘くみたのが敗因。
反射神経の塊のような五右エ門だ。大丈夫だとはわかっているのだが、臼の中に餅を捏ねる手が残っているのを見ると、つい杵を降ろすタイミングをずらしてしまう。
慣れるまで、そんなことを繰り返したのが悪かったらしい。少し時間が経ってから腰にキた。
不幸中の幸いなのは、今朝にはすっかりと治っていたことだ。やはり鍛えている分復活も早い。
そう言うと、「拙者の特性湿布が効いたのだろう」と五右エ門に返された。
あんなおどろおどろしく緑色のグチャグチャしたものが効いたとは次元には到底思えなかったが、それは言わないでおいた。無駄な争いはしたくない。
今夜こそ、鍛え抜いたこの体、腰を使って五右エ門相手に愉しむのだ。
年末働いた分、正月は自堕落的に過ごす権利はあるはず。
これまでの時間は五右エ門に付き合った、これからの時間は俺に付き合っ貰う、文句は言わせない。
深酒して寝込みましたじゃ洒落にならないと酒の量すらセーブして次元はワクワクと今夜に備えた。
 
 
 
 
 

■NENMATUNENSHI NO SUGOSHIKATA 12.31■

 
 
 
     

 

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