「五右エ門」
耳元で囁く低い声。
閨の甘さをたっぷり含んだ声色に、背筋がゾクリとした。
パッと目をあけると目の前にはしたり顔の次元。
「寝てんじゃねぇよ」
「寝ておらん。ただの瞑想だ」
次元の肩越しにみえるルパンが「行くぞぉ」と言ってドアに向かう。
仕事か、と立ち上がろうとする五右エ門の耳元に次元は唇を寄せて囁いた。
「瞑想だろうがなんだろうがそんなに無防備だと・・・キスするぜ」
低い低い五右エ門にしか聞こえない声には煽るような男の色香が混ざっている。
本気とからかい、半々というところだろう。
これから仕事だというのに何を考えてるんだ。
からかうにしても性質が悪い。五右エ門は少しムカリとした。
「別に良いぞ」
すれ違いざまにそう囁き返すと次元は驚いたように目をみはった。
その表情を眺めながらフンと鼻先で笑ってやった五右エ門であった。
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