窓の外では一晩中、赤ん坊みたいな鳴き声が響いている。
気を抜いてるとギョッとするくらい似ているが、なんのことはない。
猫だ。
今夜も一段と煩いなぁと思いながら廊下を歩いていると、自室へ辿りつくまえに別の部屋に引き摺り込まれた。
まるで恐怖映画のワンシーンのように、少し開いていた手前のドアからいきなり白い手がヌッと出てきて俺の腕を掴み、引き込んだのだ。
うわっと小さく驚きの声をあげながらも、反撃はしない。
相手の意のままに、ベッドへ引き倒された。
ギシッとベッドが軋み俺の上に白い影が覆いかぶさる。
「んっ」
鼻にかかった色っぽい息を吐きながら、柔らかい唇が俺の唇を塞ぎ、ぬるりと濡れた舌が入り込む。
全身にかかる重みも、口内を這い回る舌も、すべてが気持ちいい。
存分に舌を絡ませ唾液を味を堪能したあと、ようやく五右エ門が顔を離した。
申し訳程度に羽織った浴衣の下の肌はすでに興奮で上気し、ほんのりとピンク色に染まっている。
「今日は随分積極的だな」
据膳を断る気は更々ない。
滅多にない、こんなハプニングは礼を言いたい程、嬉しく楽しい。
「・・・春だからな」
俺の上に跨り唇の端をあげる五右エ門の瞳をみて、俺はわざと苦笑してやった。
「獣だな」
「ああ、獣でござる」
唇の端を赤い舌がペロリと舐めた。瞳は欲情で爛々と光っている。
堪んねぇ。
俺は両手を伸ばすと荒々しい動作で五右エ門を引き寄せ、ベッドに組み敷いた。
獣は獣らしく、欲望のままに盛るのがお似合いだ。
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