■なでなで■
 
 
 
 

腹をかかえてウンウン唸っているサムライをガンマンは呆れた目で眺め、既にわかりきったことであったが理由を問うことにした。
「どうした、五右エ門」
「・・・腹がいたい」
ソファーに座って腹を押さえている様はどうみても腹痛に耐えている姿だ。
それはわかっている。
問題はその原因だ。
「だから言っただろうが。久しぶりの日本食だからって賞味期限すぎたのをガツガツ喰うからだ」
次元は止めたのだ。
ヤメロと。
腹を壊すぞと。
だが、久々の日本食を前にした侍は聞く耳を持たなかった。
自業自得なのだ。
それをしっかり自覚させ釘をさしておく必要がある。
だから、わざわざわかりきったことを問うたのに、五右エ門はあまり反省していないらしく。
「少しぐらい過ぎても大丈夫だ」
と、拗ねたような声色で答えた。
脂汗を垂らしながら腹痛に耐えながら、いう台詞かね。
と次元は心底呆れた。
「・・・お前の少しの単位がわかんねぇ。年単位は少しじゃねぇよ」

だけど、次元とて鬼ではない。
苦しそうにしている五右エ門をみて、自業自得とはいえ少し同情の念がわく。
あいにくここには薬はなく、五右エ門に甘いルパンがすっとんで買いに行ったが、帰ってくるまでまだもう少しかかるだろう。
「仕方ねぇな」
フーと次元は煙を吐き出し、咥えていた煙草を灰皿に押し付けた。
ソファーに座る五右エ門に近づいて、寝かせるように肩を押す。
「なんだ?」
「いいから、ここに仰向けに寝ろ」
ぐいぐいと押すと、腹痛で弱っている五右エ門は意外と簡単にソファーへドサリと倒れた。
次元がなにをしようとしているのかわからず、不信気な視線でみあげる。
しかし、次元は気にする気配もなく「ほら、早くしろよ」と急かし、五右エ門を仰向けに寝かせた。

「なにをしてる?」
腹を押さえていた五右エ門の手をどかし、代わりに次元がその腹を撫で始めた。
やさしくゆっくりと動く手の感触に、五右エ門は次元をみながら問うた。
「子供の頃、薬がないときなんかにおふくろにされなかったか?」
次元が口の端をほんの少しあげて答える。
そうか、次元は子供の頃、母親にこんな風に痛い場所を撫でてもらっていたのか、と思いながらも、五右エ門にはいまいち次元の子供時代の姿が思い浮かばない。
やっぱり子供の頃から髭を生やしていたような感じがする。
自分の想像に少しおかしくなりながらも、己の子供の頃はどうだったかと考える。
「・・・どうかな?」
覚えていない。
微かにだが優しく撫でてもらった記憶はあるが、それがどういうときだったのか思い出せない。
「意外と効くぜ」
次元はそう言いながら、五右エ門の腹をゆっくり撫でる。
そう言われると、なんだか痛みが和らいできたような気がするな、と思いながら、五右エ門は目を閉じた。

バタンとドアが開く音とルパンの声は同時だった。
「五右エ門、薬買ってきたぞ〜!」
目をあけると紙袋を掲げたルパンが目を丸くして、こちらをみている。
「っておまえらナニやってんの」
帰ってきたら、相棒のひとりがもうひとりの腹を撫でてました、という不思議な光景を目の当たりにして、ルパンは驚きながらもちょっと呆れた。
だが、ふたりはそんなルパンの気持ちに気がつかないのか、なにをあたりまえのことを言ってるんだというばかりに
「「治療だ」」
と同時に答えたのだった。




頭をかかえてウンウン唸っているガンマンをサムライは呆れた目で眺め、既にわかりきったことであったが理由を問うことにした。
「どうした、次元」
「・・・頭がいてぇ」
ソファーに座って頭をかかえて様はどうみても頭痛に耐えている姿だ。
それはわかっている。
問題はその原因だ。
「自業自得だ。飲みすぎだと言っただろう」
いくら仕事の打ち上げだとはいえ、許容量を超えているのは五右エ門にもみてとれた。
だから一応は忠告したのだ。
そろそろやめておけと。
だが、次元はそれを無視し、ルパンと騒ぎながら飲み続けたのだ。
自業自得だ。
「小さい声でしゃべってくれ・・・響く」
両手で頭を押さえて弱々しく呟く姿は情けないの一言につきる。

だが、五右エ門とて鬼ではない。
それにこの前、腹痛に苦しんでいるときに次元が面倒みてくれたことは覚えている。
義理堅いサムライは、今度は反対に次元の面倒をみてやろうと考えた。
「・・・ナニやってんだ?」
帽子をとられたかと思うと、すぐに頭に手を置かれた。
そして、まるで子供をあやすような動きで、次元の頭をゆっくりと撫で始めたのだ。
「こうすると治まるんだろう?」
撫で撫でと五右エ門の白い手が次元の頭を優しく撫でる。
「・・・そうだな」
子供の頃、母がしてくれたのは腹痛のときだけだったが、なんだか痛みが和らいできたような気になる。
大人しく撫でられたまま、次元は目を閉じた。

キイ、とゆっくりとドアが開きルパンがふらふらしながら入ってきた。
「うー。飲みすぎた頭いてぇ」
「おはよう」
五右エ門の声に顔をあげ、目の前の光景にルパンが目を丸くする。
「っておまえらナニやってんの」
朝起きたら、相棒のひとりがもうひとりの頭を撫でてました、という不思議な光景を目の当たりにして、ルパンは驚きながらも大いに呆れた。
だが、ふたりはそんなルパンの気持ちに気がつかないのか、迷うことなく
「「治療だ」」
と同時に答えたのだった。

 
 
 
 
 

■NADENADE■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■

カップリング要素「有」でも「無」でもいいけど
こんな設定の場合、「無」の方が萌えるかなーとか思ったり。
大の男がなでなでしたりされたりしている姿は
不気味なのか微笑ましいのかどっちなんでしょうね(笑)



 
 
 

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