■りぼん■
 
 
 
 

 
どっかでガウガウと獣の声がする。
犬みたいな気もするがよくわからない、聞き覚えのない鳴き声だ。
アジトのドアノブを握って次元は辺りを見渡すが、動物の姿はどこにもないしどこから聞こえてくるのかもわからない。
「うっせーなぁ」
遠いような近いような距離感もつかめぬまま、絶え間なく続く鳴き声に次元はちょっと苛々しながらアジトのノブをまわした。
「なんだ?」
ドアをあけると一段と声が大きくなった。
なんと獣の鳴き声はアジトの中から聞こえていたのだ。
ぐるりと部屋を見渡すと、部屋の隅に少し長めの黒髪に和装といった見覚えのある姿がある。
が。
見覚えがあるとといっていいのかどうか。
その姿をみた瞬間に次元の脳はフリーズした。
まずは大きさ。
180センチの大きな男のはずが、今日はこじんまりとしていて中学生くらいにしかみえない。
座り込んでいるのでよくはわからないが、140〜150センチといったところか。
縮んだだけじゃなく、頭のうえには獣の耳。
犬なのか、猫なのか、兎なのか、判断しづらいが人間の耳ではないことは確かだ。
そしてその体に大きな布がぐるぐると巻き付いている。
まるで猫が紐にじゃれて巻きついてしまいましたという感だったが、よくよくみると頭の後ろに綺麗な蝶々結びが出来ている。
オレンジ色の大きなリボンで、まるでプレゼントのようにぐるぐる巻きにされているのだ。
それに妙に縛り方がイヤらしい。
足首、太腿、手首、と拘束目的な縛り方は絶対ルパンの仕業に違いない。
当の五右エ門はというと、必死に唯一自由になる口でリボンを噛み切ろうとしていた。
鳴き声がガウガウとくぐもっていたのはリボンを咥えているからだったのだ。
元々切れ長だった目は大きくなっていてちょっとツリ目だし、噛み切ろうと頑張っている歯にも牙のようなものが生えている。
「ルパンの奴、なに考えてんだ」
フリーズして五右エ門の状況を理解するまでほんの数秒。
すぐに我に返った次元はふうと大きく溜息を吐いた。
ピクピクと五右エ門の獣耳が立ち上がる。
リボンと格闘していた五右エ門はようやく次元の存在に気がつきパッと顔をあげた。
「よう、五右エ門」
なんと声をかけていいかわからないまま、とりあえず挨拶してみる次元。
そんな次元に向かって、五右エ門がガウガウと吼えはじめた。
「は?」
「ガウガウ、ガウッ」
一生懸命に何かを訴えていることは伝わってくるが、何を言っているのかわからない。
見た姿のままに、人間の言葉がしゃべられないらしい。
「おいおい、言葉もしゃべれないのかよ」
次元は頭をかきながら五右エ門に近づく。
ウーーと唸りながら頷く様子からみて、次元の言っていることは理解できるらしい。
ということは、獣っぽいのは姿と唸り声だけだ。
ちゃんと頭の中は人間、石川五右エ門のままらしい。
「ルパンかよ」
ガウッと大きく鳴いて五右エ門は怒りの表情を浮かべた。
「なーんで、お前はすぐにひっかかるのかねぇ」
次元は五右エ門の横に膝をついて、上から覗き込む。
五右エ門は眉間に皺を寄せウウと小さく唸った。
立ち上がっていた耳がペタリと頭に倒れ、拗ねたように唇を尖らせて、次元をみあげる。
体格差と位置関係からしても、それは上目使いというものだった。
リボンをほどこうと伸ばしていた手が、リボンに届くまえにパスンと黒髪の上に落ちた。
(可愛いじゃないか)
次元はまるで動物にするかのように五右エ門の頭を撫でた。
キュッと五右エ門の体が少し縮まって、目がギュと閉じられる。
(いや、マジ可愛いぞ)
次元の中にピョコンと悪戯心とほんの僅かなエロ心が芽生えた。
「おまえ、なんの動物にされたんだ?」
鳴き声と獣耳だけでは判断できない。
五右エ門はパチと目をあけて「知るか」というようにガウとひとこと吼えた。
「尻尾は?」
「ガウ?」
「尻尾みればなんの動物かわかるんじゃねぇか?」
袴の下に尻尾が隠れているかもしれない。
なくても、袴を脱がす口実には充分なる。
「よし!確かめてやるよ」
五右エ門の目がパチクリと見開かれる。
次元の言っている意味がまだよく把握できていないらしい。
縛られたままの五右エ門をヒョイと小脇に抱え立ち上がる。
そして。
「俺の部屋に行こうぜ。あそこは鍵がかかる」
ニヤリと笑い流し目をくれて、次元は大股で歩きだした。
ちっちゃくなって縛り上げられたうえ斬鉄剣を持たない侍など次元にとって怖れるに足らない。
身の危険を感じた五右エ門が暴れ出したときにはすでに遅く。
問答無用で次元の部屋に連れ込まれたあとであった。


デジカメ片手にルパンが戻ってきたときは五右エ門の姿はなく。
鍵のかかった次元の部屋から、唸り声とは違う濡れた鳴き声が洩れていたのだった。
 
 
 
 
 

■RIBBON■
   

    
 
 
  
 ■あとがき■
あすないさまに戴いた『
りぼんゴエ』が
あまりにもラブリーだったため
つい書いちゃった挿文。

五右エ門が子供サイズだと次元が犯罪者に
かといって大人サイズだとあのラブリーさが軽減するので
中間のサイズをとって中学生サイズにしてみました。
これで遠慮なく次元棒を使えます!<コラッ

 
 
 

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