|
飛行艇を撃ち落とされた俺はとっさに相手の戦闘ヘリに飛び移った。
このくらいのことで簡単にくたばる俺じゃねぇ。
「おっさんを舐めんなよ！」
そう叫んでアーミーマニアのような操縦者を撃とうとしたとき。
そいつの肩越しにみえた光景に唖然とした。
最近姿をみかけないとは思っていたが、いつものことなので気にはかけても気にしていなかった。
それなのに。
なんでこんなところにそんな格好でいるんだ。
俺の目に飛びこんきたのは。
猿轡を噛まされて荒縄で縛り上げらた五右エ門の姿。
カーーーッと頭に血が昇る。
どういうことだ、これは。なんでそんなことになってるんだ。
俺でさえ滅多に、というか過去に１〜２回しかさせてもらったことないのに。
なんで、このキチガイみたいな男は俺の五右エ門を縛りあげられるんだ。
それも猿轡まで！
メチャクチャセクシーじゃねえか！！！
男への怒りと五右エ門の色気にヤラれた俺に一瞬隙ができたのだろう。
情けないことに俺は男の攻撃を避けることができなかった。
手にしたマグナムはヘリの中に落ち、俺自身はヘリから落ちてしまった。
数十メートル下の地上に向かって。
パラシュートもそれに代わるものも今日は特に仕込んでねぇ。
このまま落ちれば地面に叩きつけられてお陀仏だ。
そう思うものの、俺の思考は男への怒りと嫉妬でいっぱいだった。
一発でも食らわせなきゃ怒りはおさまらない。死んでも死に切れないとはまさにこのことだ。
俺と一緒にヘリから落ちた大量の重火器類。
空をきりながら手を伸ばし、両手に銃器を握る。
そして、ヘリの操縦席に向かってそれを全弾打ち込んでやった。
運良く手にしたのはマグナムだった。
マグナムは大の男でも扱い慣れていないと撃った瞬間後ろに吹き飛ぶほどの反動がある。
それを踏ん張りどころのない空中で撃ったのだ。
連射している反動で体が後ろに吹き飛ぶ。
あくまでもそれを狙ったんだと言い切ろう。
死なば諸共、憎きキチガイ男を道連れにしてやろうと思っただけだなんて口が裂けても言うまい。
ラッキーなことに、俺の体は地面でなく、背中からナイトホーク社ビルの窓にぶち当たった。
粉々に割れたガラスの破片で小さい傷はできたが、結果、俺は無事に地表に足をおろせたのだ。
ホッとする間もなく、武装ヘリからミサイルが発射される。
しつこい奴。だいたい殺してやりたいのは俺の方だ。ふざけんな。
そう思いものの、もう手元に武器はない。
今砲撃を受けたらヤバイ。
間一髪でミサイルを避けて走るが、壁は粉砕されて俺は廊下の端まで追い込まれた。
攻撃がやむ。ヘリのサーチライトに照らされる。
今度は適当じゃねぇ。きっちりと俺に標準があわされている。
どう攻撃を避けるか。自分の周りを横目で確認しながら計算する。
突然ヘリが爆発した。
「どけーーーーー！！」
鋭い叫びと共に五右エ門がヘリからビルへ飛び移ってくる。
さすが五右エ門。並大抵の脚力、運動能力ではない。
助走もつけないというのに無事俺の横へ降り立った。
小脇に敵のキチガイ男を抱えたままで。
なんでこんな奴を助けるんだ。
と内心ムカムカ、いや表情にだって出てたに違いない。
だが俯く五右エ門は気がついていないのか、捕まった経緯を話ながら気を失った男のゴーグルをとった。
現れたのはルパンによく似た顔。
ルパンに似ていたから殺せなかったと言う。実際今だって爆発するヘリの中から助けだした。
甘ちゃんの五右エ門らしい、とは思うものの、すごく腹が立つのは確かだ。
五右エ門を捕まえ縛りあげ、そのうえ助けてもらうなんてどういう特別扱いだ。
ムカッ腹が立つ。
今すぐ銃殺してやりたいところだが、男を助け出した五右エ門の目の前で行動に移すことはできなかった。
「行くぞ」
五右エ門が踵を返して歩きだした背後で、俺は憎き男の顔を思いっきり踵で踏みつけてやった。
歯が折れ、鼻血を出して、くぐもった呻きをあげ再度気を失ったみたいだが、このくらいの報復は許されるだろう。
五右エ門の優しさと俺の忍耐力に感謝するんだな。
そう心の中で呟いて、唾を吐きかけてから苦痛に呻く男に背を向ける。
この件が一段落ついたら。
有無を言わさず、五右エ門のやつを何から何までしっかりと縛り上げてやる。
もちろん猿轡のオプションつきだ！
俺はそう強く決心して五右エ門のあとを追ったのだった。
|