■ミスターXの罠■

【エピローグ】  
 
 
 
 
 

ミスターXは苦戦していた。
予想していた以上にルパン三世は手強い。
水のサーベルで戦っているうちに自分自身の不利を実感し始めた。
ルパンの能力をコピーしようと、外見を彼とそっくりに整形したことが、現在の不利の一因だと思う。
ルパンを驚かし、ルパンを倒し、ルパンに成り代わり、相棒達の油断を誘うのが目的だったのだが。
驚かすことには成功したが、そのあとがいかんせんよくない。
「マズイ」と自分の手を一瞬後悔したのが隙を生んだのか、途端にサーベルを折られてしまった。
反撃の手はない。
しまったと冷汗が背中を流れたそのとき、ルパンの仲間が割り込んできた。
ふたりをみとめたミスターXは驚いたが、同時にチャンスだ、と思った。
外見上そっくりなふたりのルパンを見てやつらはどちらが本物か判断つかないだろう。
それならば自分が本物らしく振舞えば、同士討ちを狙える。
「答えろっ」
次元が声を張り上げて、正体を問う。
こんなに早く彼らが追いつくとは考えてなかった。
あれがもっと足止めを食らわすと思っていたが計算違いだったようだ。
その計算違いがこの好機を生んだのだが、完璧な計画だったのになぜだと疑問が湧く。
「こいつに殺されるよりせめて親友のお前の手で殺してくれ!」と叫びながら、そうかと理由を思いつく。
次元というこの男。
意外と忍耐強かった、ということはないだろう。それはパーソナルデータで拒否できる。
ということは・・・かなりの早漏タイプだったのか。そこまでは情報にはなかった。
そう思った瞬間。胸に衝撃を受けた。

外見はまったく同じだった。
どっちが本物か、次元には判断がつかなかった。
だが劣勢であるルパンが「親友のお前の手で殺してくれ!」と叫んだ瞬間、突然抑えようのない怒りが湧き上がった。
本能による行動だった。
理性はほとんど働いていなかった。
ただ怒りのままに、叫んだ方のルパンを撃った。
「はっ」と我に返って焦り捲くった次元だったが、「なぜわかった」という問いかけに間違えでなかったと安堵する。
表情には一切ださなかったが、怒りと焦りと安堵を一瞬で感じた次元だった。
「本物のルパンならせめてお前の手でってなんてもったいぶった台詞吐くはずがない。羞も外聞もなく泣き叫ぶさ。助けってくれってな」
そう答えながら、それが理由でないことは次元自身がよく知っていた。
あの唐突に湧き上がった、男としてのプライドを逆撫でられたような、強い怒り。
それが何かわからないまま、次元は「そこまで言うか?」と弱弱しく抗議するルパンの声を聞いた。
大丈夫。間違いではなかった。ああ、びっくりした。
内心大きく安堵しながら、次元はミスターXが倒れるのを見つめていた。


結局、怒りの理由はわからないまま。
なぜかなにかに傷ついたような男のプライドを取り戻すため、王宮に戻った次元はとりあえずご休憩2時間を所望したのだった。




 

■Mr.X NO WANA■

    
 
 
  
  
 

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