■チラリズム2■

 
 
 
 
 

「チラリズムってのがいいんだよ」
と、次元は言った。
袴が捲れてみえた自分の、それも男の足をみてご満悦な男に
『足なんて何を今更、夜に睦み合うときに見慣れているだろう』と心の中で突っ込んだら
まるで聞こえたかのように、そう答えられた。
『チラリズム』
確かに着物の裾が乱れてみえた女の足だとか、襟首からみえるうなじだとか、そういったものには五右エ門だって色気を感じる。
五右エ門だって成熟した男なのだ。
そういったものから受ける色気は理解できる。
でも、男の足だぞ?
女のような滑らかな、白いほっそりとした柔らかそうな足とは違う。
筋肉に包まれた硬そうな筋の張った足だ。
・・・確かに色は白いし、体毛も薄いほうではあるが(悔)
色っぽくも、みて楽しいものでもない。
バサリと袴を捲って自分の足を眺めながら五右エ門はそう再確認する。
『変態か』と言ったら『愛だ』と答えられた。
アバタもエクボ。
というやつだろうか。
少なくとも自分は次元の足をみたいと思わないし、チラリズムでも色気は感じない。
ただの毛深い、硬そうで不味そうな男の足だ。
アバタはアバタ、エクボにはみえない。
もしかして『愛』とやらが足りないのだろうか。
そう思ったものの、どう頑張ったって次元の足に色気なんか感じないんだから仕方がない。
五右エ門は軽く肩をすくめて、仲間の待つリビングに向った。

今回の自分の役割についての説明を聞く。
ルパンが詳しく話さないのなら聞く必要はないのだろうと考える侍は、特に質問することなく、自分のすべきことを頭に叩き込むだけだ。
「さて、次元ちゃん。お前はきっちりとココを抑える」
スビシと地図を指すルパンに次元は「ヘイヘイ」と答えた。
五右エ門の外出中に既にふたりで計画は練られている。
次元にとっては今更、という感じなのだろうが、返事はともかく一応真面目にルパンの話を聞いている。
地図をみていた五右エ門の目に次元の動きが入った。
特に意味はない、何気ない所作。
暑いのか、きっちり着込んだ服がきつくなったのか、次元の節ばった指が1本、襟首につき込まれた。
そしてグイグイと引っ張ってネクタイを緩めた。
「その間、お前が忍び込むんだったな。そんなにうまくいくかねぇ」
そう言いながら、次元はシャツの第一ボタンと第二ボタンを外す。
「行くに決まってるんじゃないの。俺様が失敗するわけないでしょうが」
「・・・今回、本当に不二子は絡んでないんだろうな」
「ギクッ」
「おい、こら、ギクッってなんだ!?てめえやっぱり!」
ルパンと次元がお約束的言い争うを始める。
しかし、五右エ門はそれを止めることもせず、ある一点をみつめていた。
緩められたシャツから覗く、逞しい胸板としっかりと盛り上がる鎖骨。
怒鳴る度に喉仏が動き、首の筋が浮き上がる。
いつもきっちりスーツを着込んでいるから滅多に表れることがない部位だが、五右エ門にとっては見慣れた場所だ。
睦み合うとき、いつも自分の視線の先にある。
なにを今更。
そう自分に言い聞かせようとするのに、シャツから覗いたその場所から目が離せない。
無意識のうちにコクリと唾液を嚥下した五右エ門の耳に、ルパンの叫びが響いた。
「ぼーっとしてないで、助けろ、五右エ門!!」
ハッと我に返ると、目の前には銃を構えた次元とソファーの陰に隠れて必死に助けを求めるルパン。
どうも不二子絡みのことを内緒にしていたことがばれて、次元の怒りをかったらしい。
「・・・正直に言わぬからだ。自業自得。不二子絡みなら拙者も考えさせて貰う」
動揺を隠して何事もないように装って、バクバクという心臓を落ち着かせようと目を閉じた。
男の胸元に見とれてどうする。
見慣れたはずの場所に色気を感じてどうするのだ。
バタンバタンと外界では大騒ぎだが、五右エ門は自分の煩悩を振り払うことで精一杯だ。
もしかして。
これがまさしく『アバタもエクボ』なのか?
・・・自分もとことん次元に毒されている。
そう考えて自暴気味に苦笑すると、「おい」と声をかけられた。
意外と近い声に目をあけると、次元が腰を曲げて五右エ門の顔を覗き込んでいた。
目の前には次元、ちらりと周りに視線を走らせてもルパンはいない。
きっと、次元の攻撃から逃げ切ったのだろう。無事に、かはどうかわからないが。
「とことんお前はマイペースだなぁ」
次元が呆れたような表情を浮かべ腰を伸ばすとガリガリと帽子の上から頭を掻いた。
ふたりの騒ぎに乗じず我関せず、といった風に見えたのだろう。
顔をあげた五右エ門の視線は知らずに次元の胸元に注がれる。
そんな己に気がついて、五右エ門は慌てて目を反らした。
「なにを笑ってたんだ?」
さっきの苦笑を指しているのだろう。
次元をみあげて五右エ門は少し笑った。
「なに、大したことではない」
そうか?、と口に出さず目で問う次元は何かを感づいているのか、いないのか。
それはわからないけど、五右エ門は今度は目元で笑ってみせ
「チラリズムについて考察していたのだ」
と、すまして答えた。
 
 
 
 
 

■CHIRARIZUMU-2■

 
 
 
■あとがき■

五右エ門にとってのチラリズム。
次元の男らしい胸元にくぎ付けです(笑)

なんだかんだいって似たもの同士、
ということですね(^ー^)


 

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