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『前向きでいこう』
目の前にいる髭の男はそう言った。
とても『ぽじてぃぶ』でいい台詞だと五右エ門は思う。
・・・ここがベットの上でなければ。
服脱いで、触りあって、気持ちよくなって、さてもっと上を目指そうというときに聞く台詞じゃないと思う、普通は。
これはどういう意味なのか、と五右エ門は首を傾げる。
自分の所作は積極的に見えていないのだろうか。
この行為に対して後ろ向きにみえるのだろうか。
次元は本当は自分に不満があるのだろうか。
元々修行には禁欲がついてまわるものなので、過去の経験値は確かにかなり低かった。
だが次元とこうなって、色々とまあ色々と抵抗があったりすぐには積極的になれなかったものだが、最近は慣れてきたこともあるし、自分なりに頑張っているつもりだったのだが。
「深く考え込むなよ、裏はねぇよ。ただ今日は前向きでいこうぜ、と言っただけだぜ」
苦笑しつつ次元は五右エ門を胸に引き寄せて頭にチュっと音をたてて接吻した。
深い意味はない、裏はない。
そう言われても言っている意味がわからないから、ついその意味を考えてしまうのだ。
だが別に五右エ門の経験不足を不満に思ったり揶揄したりしているわけではないようだ。
次元の表情からも態度からもいっさいそういったものを感じない。
でも、もしも。
『前向きでいこう』の言葉の中に何かが隠れているのなら、五右エ門もそれなりに応えたいと思うのだ。
受ける性でない男の五右エ門にその行為を求めるだけあって、次元はマメだ。
愛撫にはたっぷり時間をかけるし、解すのにも気をつかってくれている。
そのせいか達する比率ははるかに五右エ門の方が多い。
だから少しでも次元が気持ちよくなれるのなら、五右エ門も「前向き」に頑張りたいと思う。
そんな真面目で健気な五右エ門は次元の言った台詞の意味はわからないものの「前向き」という言葉に刺激されて「うむ」と頷いたのだった。
「な、にが前向き・・・だっ」
体を上下に揺さぶられながら息も絶え絶えの状態で五右エ門は抗議する。
「間違ってないだろ？」
楽しそうに答えながら、次元は腰を大きく突き上げる。
ベットが大きく揺れてスプリングがギシギシと悲鳴をあげた。
「あっ！」
仰け反る五右エ門の後頭部が次元の肩に押し付けれた。
「ほら、前向けよ。自分がどんな顔して俺に抱かれてるのか、ちゃんとみろよ」
大きな鏡の前。
ベットの上に胡坐をかいた次元のそのまた上に五右エ門は座っている。
もちろん後孔には次元のモノがぐっさりと根元まで差し込まれている状態だ。
小さい子供におしっこをさせるかのように、次元は五右エ門の大きく開かせた両足を抱え上げ、腰を上下にスイングし続けていた。
両手がふさがった次元のモノ１本だけでの刺激。
それはそれで気持ちいいのだが、男の性としては前への刺激も当然求めてしまう。
最初こそ恥らい耐えていた五右エ門だったが、もう我慢できないとばかりに自身を扱きはじめ、今は両手で自分の体に愛撫を加えていた。
左手で尖った乳首を摘みながら、右手は自らのモノを握り扱いている。
五右エ門の痴態とふたりの結合部分。
目の前の鏡にはそれがしっかりと映っていて、視覚的にもかなり興奮する状況、体位である。
「前向きでイこうっていったろ？」
「ば、かっ」
「お前の・・・鏡まで飛ぶかな？ホラ、とっととイケよっ」
耳朶をレロリと舌で舐めあげながら、抱えた軽くはない体を上下に揺らす。
もちろん落とすときに思いっきり腰を突き上げることは忘れない。
深い交わり、くちゅくちゅと響くいやらしい音、そして目の前で繰り広げられている自分達の痴態。
恥ずかしいのにそれを凌駕するほどの興奮。
次元の突き上げに比例して、五右エ門の自身を扱く手はどんどん早くなる。
前後の快感に耐え切れず、五右エ門は前に向かって思いっきり射精した。
鏡まで届いた五右エ門の精液がその表面を流れ落ちるのをみた次元の背筋をぞくぞくとした興奮が駆け上がる。
「前向きでイく、ってのも・・・いいだろ？」
絶頂からくる強い締め付け、その後にくる内壁の蠢き。
それを存分に愉しみながら、次元は達した五右エ門の耳元にそう囁いて、自らも熱い肉奥に精を思いっきり放ったのだった。
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