【注意】
 
ルパン三世yの66話『鬼に魅せられた五右エ門』より。その後を妄想。少々ネタバレあり。

『惑わすもの』の続きです。
  
 
 
 

 
 
■例外の自覚■
 
 
 
 

[2]
 
白い躯が湯に隠れたことに安堵して次元が再び顔をあげる。
だが、目は帽子のツバの下に隠したままだ。
「・・・帰ってきたのか」
「ああ」
何も言わずにいようと思っていたが、つい確認してしまった次元の問いかけに五右エ門は答える。
次元の態度と問われた内容に、五右エ門は彼がルパンと同じことを考えているのだと確信した。
ルパンは言った。
『左門が好きだったのか?次元よりも?』と。
同じように聞いてくれれば先程のように即座に否定するのだが、きっと次元は聞かないだろう。
だからこそ否定する機会は自分でつくらねばならない。
否定しなければずっと次元は誤解したままだ。
それは勿論五右エ門の善しとするところではない。
自分の言動がすべての誤解の元なのだ。自分で蒔いた種は自分で刈り取らなければならない。
そう思っても、口下手な五右エ門はどう切り出してよいのかわからない。
ふたりの間を沈黙が包む。
その雰囲気に耐え切らなかったのか次元が湯からあがろうかとするように躯を動かした。
今言わねば駄目だ。逃がすものか。
焦った五右エ門は「次元!」と鋭く名前を呼んだ。
次元の動きが止まる。
「言っておくが、男は恋情の対象ではない!」
「・・・はぁ?」
突然の言葉に次元が間抜けな返事を返した。
「ルパンもおぬしも拙者をどう思っておるのか知らぬが、男に対してそんな感情は持ち合わせぬ」
あっけに取られた次元だったが、五右エ門が左門とのことを言っていることに気がついた。
男に恋情など抱かないとそんな関係ではないと。
妙にほっとしたのも束の間、その言葉は自分にも当てはまるのではないかと思い至った。
帽子のツバを持ち上げて五右エ門をギリリと睨みつける。
ああ、そうかい。
じゃあ俺もお払い箱ってことか。
俺とのことは気の迷い、どうもすみませんでした、っつうことかよ!
悶々とした悩みは一瞬で消えて、それ以上の怒りと絶望が湧き上がってくるが
次の言葉でそんな感情もあっという間に霧散した。
「だから、おぬしは例外なのだとちゃんと自覚せい!」
白い五右エ門の肌。
顔がほんのり赤く染まっているのは湯による効果ではなさそうだ。
唖然としている次元に近づくと五右エ門は帽子をとって岩場に投げやった。
隠すものがなくなった次元の頬を両手で掴むと、正面からその目を覗き込む。
嘘偽りのない色を乗せた瞳に魅入られたように次元は視線を合わせた。
「おぬしは拙者を惑わし、修行から引き離す。剣の道を生きる者としてはそれは決して歓迎できることではないが」
白い顔が近づき、薄く形の良い唇が厚めの唇に触れる。
滅多にない五右エ門からの口付けに次元は驚き目を丸くした。
「だが、拙者は・・・石川五右エ門はそれが嫌ではない。おぬしらになら惑わされてもいい」
「・・・五右エ門ッ」
唇を離して吐息が触れる近さで囁いた五右エ門を次元は思いっきり抱きしめる。
首の後ろに手を添えて固定すると、噛み付くように唇を奪う。
誘うようにはじめから開いた唇の中に遠慮なく忍び込み舌を吸い絡ませる。
五右エ門の腕が次元の首に絡まる。
お互いがお互いを引き寄せ、肌を寄せ合い唇を奪いあうように激しく口付ける。
動きに合わせて湯が動きちゃぷちゃぷと音を鳴らすが、それに混じる唾液を交換する淫らな水音。
夢中になって喰らいつくさんばかりにお互いの味を味わった。

ようやく唇が離れ、荒い息のもと抱きしめあう。
「そういや、俺だって男なんてお断りなんだよなぁ」
「知っておる。拙者が例外だということもちゃんと自覚しておる」
「そうか」
「そうだ。それなのにおぬしは自覚が足りんのだ」
柔らかく良い匂いのする女の躯。
それに欲情するのは男として当然のこと。
それなのに、なぜか自分は男である五右エ門にも同じ反応をしてしまう。
はっきりいうと同じ反応どころかそれ以上に些細なことで反応してしまうのだが。
今だって裸で抱き合って口付けを交わした結果、既にビンビンだ。
「ところでよう」
「なんだ?」
「さっきお前、『おぬしら』って言わなかったか?」
なんとなく引っかかっていた言葉。
『おぬしになら惑わされてもいい』じゃなかった。五右エ門は確かに『おぬしら』と言ったのだ。
「ああ、言ったでござる」
あっさりと認めた五右エ門に次元は「どういうことだよ」と目を向く。
「『おぬしら』は『おぬしら』だ。次元お前と、ルパンと不二子・・・」
ゆっくり指を折り数える姿に次元は二の句が告げない。
「拙者を惑わすのは『おぬしら』だ」
パクパクと口を開け閉めした後に、諦めたように次元は溜息を吐いた。
「あいつらと同じレベルなのかよ」
ちょっとショックな次元だった。
ルパンはともかく不二子ってなんだよ・・・とブツブツと言う次元の手をとると五右エ門はある場所へその手を導いた。
「なっ!?」
「だが、こんな風に拙者を惑わすのはおぬしだけだ」
意外な行動に吃驚する次元に向かって五右エ門は恥かしそうに呟く。
「誘ってるのか?」
「拙者もたまにはおぬしを惑わせてみたい」
自分と同じく力をつけた五右エ門自身の状態を知った次元の耳に届く五右エ門の甘い言葉。
ズクンと下半身にクル。
ビンビンだったはずが更にビンビンな臨戦状態になる。
こうなったら自分自身にも自分を止められない。
「俺はいつだってお前に惑わされてるよ・・・・」
五右エ門と湯にのぼせて頭がクラクラしてくる。
彼の躯を抱いたまま湯船から立ち上がると、ゆっくりと白い躯をその淵に押し倒した。
「さあ、もっと惑わしてくれ」
覆いかぶさる次元の躯に五右エ門の腕が足が絡みついた。
 
 
  
 
 

[終]
 

 
■REIGAINOJIKAKU■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
「惑わすもの」の続き。
「惑わすもの」と違ってちゃんと次元登場。
そして(たぶん)ちゃんとジゲゴエ。(笑)

ふたりともノーマル希望。
でもお互い相手だけは「例外」ってのが萌え。
そして男前な受けが好きです。
うちの五右エ門が男前かどうかは不明ですが(笑)
 
 
 
 

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